ROD & CUSTOMのお勧めはここ
対策の柱に、「コミュニケーション」の回復が据えられた。
まずは長期的な方針(ビジョン)を提示し、簡潔に表現する(たとえば「N180」、すなわち販売台数100万台増、営業利益8%、それに負債ゼロ)。
それを内外に広報すべく、社長みずからがマスコミにも積極的に登場する。
それぞれの部門と地域、階層から責任者を集めてひとつの問題に取り組む「クロス・ファンクション」によって、壁となわばりを取り払う。
企業にとっての課題が賃金総額の削減だとして、それを裁量的に果たそうとすれば不満が社会にたまるばかりだろう。
それを切り抜けるためにも、社内での風通しは改善する必要があるのだ。
以上は企業内での風通しの良さの話だが、従業員は、働くうえでも企業の外にある社会とのつながりを持つ必要がある。
というのも消費社会化が進んだ現在、多くの企業は消費者の欲求に耳を傾けて商品開発を行わねばならないからだ。
繰り返すが、大量生産・大量消費の時代には「売り手市場」であったが、1970年代の半ば頃から製品は「買い手市場」に置かれるようになり、消費者の求める商品しか売れなくなったのだと私は見ている。
世の価値観を知らずには、商品開発を行うこともできなくなっているのである。
いくら企業内で「良い」とみなされる商品であっても、消費者の評価を受けなければ売れないのだ。
さらに最近ではサービス化も進んでいる。
サービスにかんしては消費者が直接に受け取るものであるから、その評価を免れることはできない。
成果主義は、それがたんに企業内部で不満を引き起こすのにとどまらず、社会的な意味においても注目されている。
2005年4月に尼崎市で脱線事故を起こしたJは、J各社のなかで唯一成果主義の人事賃金体系を導入していた。
あの脱線事故で、運転手本人に対してよりも、Jという組織に異様さを感じた人は少なくない。
乗客の生死も判明していないうちに広報が執勧に「置き石」を脱線原因として示唆し、救助を他入ごとと考えるかのように事前に決まっていた宴会を行っていた。
原因究明よりも組織防衛を図り、救助よりも組織の親睦を重視するのだから、社会に目を向けない組織という印象が強い。
従業員にしても、上司がすぐに出社するように求めれば事故を認識していても逆らいにくかっただろうし、上司が職場の宴会を呼びかけたままならば、直接救助にあたっていない部下は断るのに抵抗があるだろう。
それはJの社風というよりも、上司が評価するという成果主義の賃金制度に由来する可能性がある。
成果主義が風通しの良さではなく上司の裁量と結びつくと、逆に組織の閉鎖性を高めてしまう。
第3象限のソーシャル・キャピタルにおいては、「共感」が人と人をつなぐ基本原理となるが、それと対極にある第1象限は、社会に対する共感をまったく欠いているのである。
労働市場の流動化は、学校企業パイプラインの企業側に成果主義の導入という変化を引き起こしたが、変化は学校制度にも波及しつつある。
それは、2つの次元で生じた。
第1は、学校の卒業生を、そのまま正社員として全員引き受けなくなったという点である。
労働可能年齢にありながら非正社員である人が劇的に増えたということであり、学校が行ってきた労働についての人材配分や、専門性を身に付けさせることを通じて各業界の各企業に人材を供給していく働きを、受け入れ先が否定しているということでもある。
それは卒業生たちの専門技能を否定するかのように、マニュアルに沿ったアルバイト・パート的な仕事しか与えなくなっているということだ。
「パイプラインからの漏れ」である。
フリーターは、厚生労働省によれば33万人(2004年)、内閣府では417万人(2001年)となっている。
いずれによっても、その数は10年間で倍増している。
計測数の大きな開きは、厚労省が現在無職の人のうちフリーターという立場を自発的に選択しておりパート・アルバイトを希望する人(正社員になりたくない人)のみ含めるのに対し、内閣府が正社員を希望するのにフリーターにならざるをえない立場の人(正社員になれない人)も含むことに由来している。
こうした定義の相違そのものにも、時代背景が映し出されている。
というのも、厚生労働省はフリーターを当初、平成3年版の労働白書で集計したが、その時点では正社員になりたくない自由人という立場が注目され、その定義が今にいたるまで維持されている。
それに対して内閣府の03年の定義では、正社員を希望してもなれないというフリーターの負の側面がよりクローズアップされるようになったのである。
ここには、この10年間で正社員と非正社員との間に大きな溝が横たわるようになったことが示されている。
問題は、現在のフリーターが正社員ではないため未熟練のまま放置され、年収も多くは時給が最低賃金を割る低賃金ゆえに平均140万円であり、親と同居でなければ暮らしが成り立たず、それゆえ結婚もままならぬ状況にあることであろう。
正社員と非正社員の間で歴然とした格差が存在しているのであり、しかも正社員の親は高階層に属していることが明らかになっている。
日本で所得格差が生じているのではないか、ないし親の所得階層によって子供の教育機会が不平等化しているのではないか、といった幾種類かの不平等論が唱えられてきたが、正社員か非正社員かという格差も家庭環境から生まれるようになってしまったのだ。
企業が正社員として雇用しない→就職意欲が薄れる→企業が雇用しようという意欲をさらに失う、という悪循環が起きているのであろう。
企業自身が非正社員を雇用の一形態であると公式に認めるようになったことは、旧日経連(現日本経団連)が1995年に「雇用ポートフォリオ」という考え方を提唱したことに象徴的に表れている。
それは、基幹労働者を中心に長期雇用を前提とする「長期蓄積能力活用型グループ」、専門的熟練・能力を有する「高度専門能力活用型グループ」、有期雇用で職務に応じて柔軟に対応させる「雇用柔軟型グループ」の3つに労働者を区分し、自社の経営環境と従業員のニーズを踏まえて組み合わせていこうとするものである。
企業からすれば、ちょうど資産を適当な比率に組み替えるように、雇用の組み合わせを変化させようというのである。
日本経団連の04年のアンケートによれば、過半数の52%の企業が「パート・派遣などの比率を拡大する」と答えている。
こうした次第であれば、皆が正社員として雇用されることは現実に不可能であろう。
では、正社員・非正社員といった区別を企業が厳然と行うようになった背景には、どのような事情があるのだろうか。
それはグローバリゼーションや高度情報化(IT化)の結果だとされている。
そうした避けがたい経済社会の趨勢ゆえに、専門技能を持つ人々が正社員として雇用され、持たない人は非正社員になるしかないというのである。
けれどもそれは、一般的すぎる説明ではないか。
高校では、工業高校や商業高校、工業科や商業科の卒業生は比較的容易に就職先が見つかるのに対して、普通高校の卒業生が就職難となっている現象がある。
これは、国語や数学・英語や理社といった大学の入試科目だけを勉強した高卒生には、就職機会が減っているということを示している。
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